そして、季節は初冬。


朝晩の冷え込みは、四方を山に囲まれているこのど田舎では毎年厳しい。


マフラーに手袋、ニット帽にダウンジャケットと、これでもかというほど着込んでも寒くて凍え死んでしまいそうなのだ。


そんな恐ろしく寒い真冬までのカウントダウンが始まった。






カウントダウンといえば、クリスマスもだ。






バンドの練習でなかなか家庭クラブに来られないなっつんが、久々に顔を出した時のこと。


なっつんは器用にマフラーを編みながら、思い出したように私に話しかけて来た。






「そういえば、今年のクリスマスはね、新しく出来たショッピングモールのイルミネーション見に行くんだ!昨日、明日音くんに誘われたの」







明日音くんに告白したことを知らないなっつんは、容赦なく私に矢を放ってくる。


グサリと刺さった矢はおそらく当分抜けない。


心に深い傷跡ができ、出血していた。




「へえ、そうなんですか!私たちも行こうかな~」






「クリスマスまであと20日か…。カウントダウンですね!」






クリスマスに胸を躍らせ、目をキラキラ輝かせている後輩を見て、私は心の中で、長くて深いため息をついた。



クリスマスが来ようが、来まいが、イルミネーションを見に行こうが見に行かないが、私には関係ない。



そう痛感すると余計に自分が惨めになった。







「翼ちゃんはイルミネーション見に行かないの?」






なっつんに悪気が無いのはわかっているが、今の私には嫌みにしか聞こえなかった。


私は「カレシいないしね~」と笑い飛ばし、平然を装った。


素直ななっつんは言葉をそのまま受け取り、


「そうだよね。カレシいなきゃ、わざわざ遠くまでイルミネーション見に行かないよね」


と返答した。




私が顔をしかめるのを後輩達は見逃さなかった。


さすがに私を気の毒に思ったのか、彼女達は期末テストに話題を逸らした。


心の中で感謝しつつも、もやもやとした重苦しい感じは拭いきれなかった。