ずっとキミが好きでした。

声のする方へ視線を移すと、そこには明日音くんがいた。






「キサマ、邪魔しに来たな?!」





「お前一人でどう戦う気だ?!」






高橋組が高らかに笑っていると、明日音くんが傘を振り上げてこちらに向かって勢いよく走って来た。


私に馬乗りしていたヤツも応戦し、私はなんとか解放された。


死にかけた私は、通常の呼吸を取り戻すのに、かなりの時間を要した。


それに対して、男の子達の戦いはあっという間に決着した。





「どうも、すんませんでした~」





「松田、早くしろ!」





高橋組はあっさりと降参し、わなわなと震えながら自転車を漕いで逃げて行った。


後から聞いた話だが、高橋組は皆、明日音くんの見事な傘さばきにやられたらしい。


高橋幸太郎が引き連れていた男の子達は“高橋幸太郎”という虎の威を借る狐達だったため、体と体をぶつけ合うような戦いはおろか、母親に口答えさえも出来ない、ガラスのハートの持ち主だったようだ。


つまり、高橋組はケンカに不向きな、か弱い集団だったということだ。




高橋組が去り、雨も少しずつ弱まって来ていた。






「翼、大丈夫か?」






「おれ、死にかけたわ。助けてくれてありがとな」






私がそう言うと、明日音くんは私のことがよほど心配だったのか、泣き出してしまった。


どうやら明日音くんは人情に厚い人だったらしい。


私ももらい泣きして、しばらく優しい雨に打たれながら二人で泣いていた。