ずっとキミが好きでした。

あの日は雨が降っていた。


当時私はまだ“おれ”だったから、放課後遊ぶといったら、専ら男の子達とだった。


いつものように、明日音くんとみっくんとで帰ろうと思っていたが、私と違って人気者だった彼らには、私以外にも遊び相手が山ほどいて、私とは帰れないことになっていた。


私は一人、傘もなかったから雨に打たれながら走って帰っていた。





そして、悲劇は起きた。






「居たぞ!今日は土門一人だ!」






地元じゃ有名な御子息の高橋幸太郎率いる六年生五人組、通称“高橋組”が自転車をかっ飛ばして来た。


高橋組の自動車のスピードに驚き、私は尻餅を着いてしまった。


お気に入りだったデニム素材のショートパンツに水が染み込んで大きなシミを作った。






「だっさ~!」






「漏らしてるぜ、コイツ!!」






「キャハハハハハ!!」






高橋組は因縁の相手だった。


この事件の前に高橋組と私たちは、ど田舎に唯一ある小さな公園の鉄棒で、懸垂対決をした。


リレー方式でやり、長く懸垂出来ていた方が勝ちというルールで行われた。


五対三で圧倒的に高橋組が有利だったにもかかわらず、ヤツらは負けた。


体格が良い割に、ヤツらは腕力が微塵もなかった。


五年生に負けたのがよほど悔しかったのだろう。
それからというもの、何かにつけて私たちに構ってくるようになった。


特に女の私はヤツらの標的だった。


女なら、すぐにこてんぱんにやっつけられるとでも思っていたに違いない。


でも常に橘ツインと行動を共にしていた私を狙う隙はなかった。



この日までは…。






「今日こそ、やってやる!!」







私は高橋組の一人に馬乗りされて腕と足の自由を奪われた。


そして、ヤツらが持っていた傘で体中をつつかれた。


痛いとかくすぐったいとか何も考えられず、とにかく無心で抵抗した。




このままでは殺されてしまうという私なりの危機感があったのかもしれない。


大声で「助けて」と叫ぶと、口の中にヤツらの使った汚いハンカチを押し込まれた。





「よし!とどめだ!」






幸太郎が傘を振り上げて私が目をつぶった、








その瞬間だった。













「翼!!」