ずっとキミが好きでした。

なっつんが週一で通うようになり、とある変化が起きた。





「明日音くん、昨日食べてくれなかったんだね」





 
ノートにはみっくんの字で、『にんじんのホットケーキおいしかったよ!』と書かれていた。





「明日音くん、今日はミカンゼリー作ってきたよ。保冷剤溶けちゃうと困るから、私いなくなったら、すぐ食べてね。…じゃあ、また明日ね」






私がノートとゼリーの入った保冷バッグを置いて立ち上がると、ドアの隙間から勢い良くルーズリーフが飛び出して来た。


慌てて拾い上げ、文面を見ると、この数週間の中で一番ネガティブなことが書いてあった。




 


『オレって必要?』







なぜこんなことを急に尋ねて来たのか、私にはさっぱり検討がつかなかった。


二週間以上も部屋に閉じこもっているのだからそろそろ精神的に弱ってきてもおかしくない頃だ。


私だったら、こんな生活、一日でも耐えられないと思う。




もぐら生活が予想以上に長引いてきていることに改めて気づかされた私は、急激に焦りだした。


このままでは明日音くんの声が聞けないどころか姿まで見られずに最悪の事態が起こってしまう可能性もある。




私は手ににじんできた汗をハンカチで拭いてから、ルーズリーフの余白に自分の思いを思い付くままに書いた。


100パーセント伝わらなくてもいいから、少しでも前向きになってもらいたかった。






「明日音くん、まだ耳聞こえてる?さっきの質問の答えを今送るよ。ちょっとでも良いから、目、通してね」






私はゆっくり深呼吸をしてから、早口で言った。






「私は…ーー明日音くんが必要だよ。今も昔もずっと…。だから…いなくならないでね」








部屋の中からは物音一つ聞こえてこない。


扉の向こうに明日音くんはいるのか、ちゃんと呼吸しているのか、それさえも確信が出来ない。




毎日通うという作戦はあまり効き目がないように思えた。