ずっとキミが好きでした。

学校に着くとさらに気分が悪くなった。


胸のもやもやが胃に降りてきてしまったのか、胃がムカムカして来て、階段を上りきる時にはキリキリと痛みが生じていた。





 
「翼ちゃん、顔色悪いけど大丈夫?」






なっつんが心配してくれたが、私じゃなくて明日音くんを心配してほしいと思った。


もっと見てあげてほしいと思った。





きっと強がりの明日音くんは、カノジョにも自分が苦しいのを言っていないだろう。


言わないんじゃなくて言えないのかもしれない。


だったら、気づいてあげなきゃならないのに…。



 
私より近くにいたのに、どうして気づかないの?


どうして笑って練習に行けたの?






頭の中がなっつんへの不信感で覆い尽くされ、危険信号が点滅した私は席を立った。






「ちょっとトイレ行ってくる」






なっつんに当たってしまう前に、私は彼女から離れた。




このどうしようもない感情を吐き出す場所はどこにもなかった。


何も知らず、楽しそうに、そして幸せそうに準備をしている生徒の中で私だけが黒ずんでいて、彼らのパステルカラーに真っ黒な染みを作っている。


絶海の孤島に一人取り残されたみたいな孤独を感じた。


一秒でも早く消したいこの感情を押さえ込むのが、今私にできる精一杯のことだった。




蛇口をひねり、冷たい水で、顔をゴシゴシと洗った。


出てきそうになる熱いものを必死に水の冷たさと痛さで消した。


鏡に映った自分の顔は真っ赤で、恐ろしいくらいブサイクだった。



そんな自分を見て笑った。


無理に笑顔を作った。




この辛さは生涯忘れることはないだろうと思いながら、おれはトイレを後にした。