曲が終わると同時に拍手が沸き起こった。


おれも両手を痺れさせて精一杯拍手を送った。

 
鳴り止まぬ拍手の中、人混みに紛れるようにおれは歩き出した。


大勢の人の間を掻き分け、時にぶつかりながら前へ前へと進んだ。


階段を全速力で駆け下り、昔3人でよく走り回った田んぼ道を、長く伸びた髪の毛を振り乱しながら走り抜けた。


家に帰るまで一度も振り返らなかった。


過去の自分と決別するため、おれは自分に鞭を打った。









玄関の扉をガラガラと勢いよく開けると、目の前には耀がいた。






「翼、可愛くなったな」






耀のその一言は、ハサミだった。


糸がプツンと切れ、我慢してきたものが一挙に溢れ出た。


ダムの決壊の瞬間もきっとこんな感じなのだろう。


良くできた兄は、妹の背中を優しくさすってくれた。







おれの人生に一区切りがついた日だった。