ずっとキミが好きでした。

そして色んな意味で記憶が一番鮮明なのは、学級会での話し合いの時のことだ。





「えーっと、今日は来月開催される発表会でやる劇の配役を決めたいと思います。それでは、進行の土門さん、よろしくお願いします」





先生からバトンタッチされた後が地獄だった。




忘れもしない4年2組。


たったの二十人しかいないクラスメートをおれはまとめられなかった。


原因はもちろん、アイツら。



 


「まず、演目ですが…」





「演目ってなんすか~?」





あっすーの連れの一人、田中くんが質問して来た。


攻撃を仕掛けてきたようだ。




おれはそれには答えずスルーし、挙手した野中さんを指名した。


当然腹が立った田中くんは、ヤジを飛ばす。





「あのー、俺の質問答えてませんけどー」





野中さんがおれに助け舟を出す。





「あたしが今言ったようなこと。シンデレラとか、白雪姫とか。あんた、そんなのもわかんないの?」





野中さん、よく言ってくれた!


おれは野中さんに拍手をしたい衝動にかられたが、それは一瞬で打ち砕かれた。




「俺もだけど、土門さんも分かってないんじゃな~い?だって、さっき答えられなかったもん!」





はあ?


コイツ、何を言ってる?


田中くんの日本語の意味がさっぱりわからない。



とりあえず、反論する。





「分かってます!」




 
「分かってんなら答えろよ!アホ!」




「そうだ、そうだ!」


      

「こんなヤツが進行して大丈夫か?」




「土門翼、断固反対!」




「断固反対!」




あっすーの掛け声と共に、仲間たちが騒ぎ出す。


黙って見ていた先生が止めに入るも、ヤツらは続ける。





「出来損ないの進行なんて、必要ないっしょ?」





「俺たちは何も間違ってない!!」






おれとこいつらの犬猿の仲のせいでクラスメート全員を巻き込んでしまっている。


おれが罪悪感に苛まれ、肩をストンと落としていると、先生が声を張り上げた。





「いい加減にしなさい!4年生にもなって何やってるの!そもそも、あなたたちが土門さんを推薦したんでしょう?邪魔ばかりしてないで、ちゃんと手助けしなさい!」





流れる沈黙。



止まった、時。





おれが顔を上げると、ヤツらはポカーンと口を大きく開けていた。


先生からは視線を外し、気まずそうに俯いていた。








…勝った!







勝ったよ!
   






この時初めておれは仕返しが出来た。


やられっぱなしだったおれの、予想だにしなかった快勝だった。