「ほ、ほら、今更だけど、あんまり私に触ると慎ちゃんにも風邪が移っちゃうから」

「移せばいいよ」


なんて甘い響きなんだろう…

まるで恋人に吐くような台詞に、不覚にも次の言葉を見失う。

思わず慎ちゃんから視線を逸らし、呼吸を整える。

……と、それを見た彼が途端心配そうな表情に変わり、私が息苦しいと勘違いしたのか、今度は頬に手を添えて顔色を伺ってきた。


「大丈夫?苦しいの?」


いや、貴方のせいですから…

顔、近いですから…

そう思ったものの、言葉にはできずゆっくり首を横に振るのが精一杯。

頬に触れた手が思いの外大きくしっかりとしていて驚いた。

それは彼が昔より大人になったという証。

手だけじゃない。私を見つめる目元も鼻筋も昔と変わらないのに、どこか違う。

あの頃に比べるとすごく大人になった。

3年という月日は彼をよりたくましく、素敵な男性に変えたんだ。


「俺には甘えていいよ」

「えっ?」

「困ったことがあったら何でも言って?どうせ今回も彼には遠慮して素直に甘えれなかったんじゃないの?」


ズバリ確信をつかれ、目を丸くする。


「梨央は昔から人の顔色ばかり伺って自分の気持ちを押し殺すところがあるからね。こんな時ぐらい我慢しないでもっと我が儘言ってもいいんだよ」


「慎ちゃん……」