「これは何の茶番劇だ」
そう言って睨まれた時、私は顔を引きつらせることしかできなかった。
腕を組み、私を見下ろす彼の顔は怖いぐらい冷静で、だけどそれがまた異常に……怖い。
だけどその時、助け船の弦さんの声がした。
「ほう…、思ったより早いお迎えじゃねーか、随分頑張ったな。褒めてやるよ」
「………」
コウさんの睨みの矛先がすぐ、弦さんに変わる。
「何なんですか、暇人ですか」
「なかなかいい刺激になっただろう」
「理由をちゃんと述べてくださいよ」
きっと目の前の相手が西田さんだったら今頃怒鳴り散らしてるんじゃないのかな?
だけどやっぱりそこは立場の違い?自分の元上司だけあってか、コウさんもそこは冷静さを保ってるように見える。
「嬢ちゃんがあまりに暇そうにしてたからなぁ。ちょっとした親心つーか、親切心だ」
弦さんは私の顔をチラッと見て頭をポンポンと叩く。
「本気で俺に取って食われるとでも思ったか」
この様子からしてきっとさっきの話しのやりとりは内緒にしていてくれるのかもしれない。
弦さんを見ていると何となくだけど、そんな様子に見てとれる。



