はたしてコウさんは来るのだろうか……?

一体どうなるの?と、不安と期待がまじり合う中、


「嬢ちゃんはどう思う?30分以内に来ると思うか?」

「………」


弦さんはやっぱり楽しそうだ。

おまけに「30以内に来たら暫くこの店の酒はただで飲ませてやるよ」なんて言うし。

その後も淡々と仕事をこなしながら、コウさんを試すだなんてよっぽどの強者。

さすがコウさんの上司だけあるなって、関心を飛び越えて逆に恐怖なんですけど…。

そんな不安をよそに、弦さんはいたって普通の素振りで他のお客さんの接客に行ってしまった。

そして3分、5分、10分……、時間は過ぎていき、

ちょうど15分経過したところで突然、店のドアの方が騒がしくなったと思ったら、強めにそれは開かれた。



「弦さんっ、何の冗談ですか?」


そして見慣れた姿が顔を出す。

あっ…と思った時には素早く私の姿を見つけた彼は長い足を動かし、こちらに迷いなく向かってくる。

その顔を見た瞬間ドキリ…、胸がときめいたのもつかの間、コウさんとの距離が縮まってくると私は思わず体を硬直させた。


だってその表情は遠目から見ても分かる。

めちゃくちゃ不機嫌だ。

目元はいつも以上につり上がり、ただならぬ殺気を感じるほど。