愛情の鎖 「番外編」〜すれ違いは蜜の味〜。


これは貴重な体験だ、なんて呑気に考えているとコウさんが突然私の方に振り返る。唐突に名前を呼ばれたから私はドキリと顔を上げた。


「大丈夫か?」

「……えっ?」

「さっきからやたら大人しくねーか?」


それは貴方がいるからです。

とは言えず、やっぱり曖昧な笑顔を返すだけ。

だってさ、どうしても落ち着かない。自分の部屋にコウさんがいると思うと、それだけで胸がいっぱいになる。


「ちょっと疲れちゃっただけですよ。それよりコウさんは大丈夫なんですか?うちに泊まるって…、明日も仕事なんじゃないの?」


私はそう言いながら、コウさんに落ち着いてほしくてその辺に座るように即した。

あまり広いとは言えない10畳程のスペース。

小さめのローテーブルに一人用の座椅子。

それからちょっとしたS字型ディスプレイラックに、左右に袖が付いているタイプの両袖机。

右隣にはセミダブルサイズのベッドが置いてあり、部屋の隅に観葉植物なんかは置いてあるが、何処にでもありそうなシンプルなインテリア。

唯一季節感を漂わせるのは高さ1メートル程のクリスマスツリーなわけで。

コウさんのマンションに比べたらそれは一目瞭然、少し窮屈に思えるかもしれないけれど、彼はそんな私の指示に思いの外素直に従がってくれた。


「明日は休みだから問題ない。たまには俺だってゆっくりしてもいいだろ」

「……でも、うちにいたらくつろげます?」


密かな心配を向けると、彼は私を見つめながら少し呆れた発言を向ける。


「アホか、むしろ此処にいた方が俺もちょうどいいだろ。さっきの件で色々と詳しく調べられるし、もし仮にまた犯人が来たとしてもすぐに対処できるだろ?」

「…なんか……、色々とすみません。こんなに親切にしてもらって」

「当たり前だ。さっきの幼馴染くんじゃないが、何かあってからじゃ遅いからな。これでも俺なりに心配してるんだよ」