コウさんに触らないで。
私以外の人に触れてほしくない。
自分からわき出た思いに驚いた。
宗一郎さんの時とはまるで違う。
彼の浮気現場を見た時はこんな感情にはならなかった。むしろ笑っちゃうほど冷静だった。
けっしてコウさんが悪くないってことは分かってたはずなのに、今まで感じたことのない醜い感情を誤魔化しきれない。
そして嘘をついた自己嫌悪。
本当は大丈夫なんかじゃない。
めちゃくちゃ嫌なんです。
と言えなかった自分が悲しくて、分かりやすく落ち込んだあと、私は後悔の繰り返し。
だって本当のことを言ったら余計困らせちゃうかもしれない。
面倒な女だなんて思われたくない。そんな風にもの分かりのいい女を演じてしまった私はやっぱり違うのかなって…、
店員さんが運んでくれたハンバーグ。
それを見つめながら、ふいに目の前の慎ちゃんにそんな胸のうちを語り出すと、当たり前だけど彼のフォークを持つ手が「えっ」と止まる。
「慎ちゃんはさ、恋人からやきもち妬かれるのってやっぱりうっとうしいと思う?」
悩んだ末私はそんなことを口走っていた。
気付けばもうすでに慎ちゃんは「頂きます」と食べる準備をしており、
それを聞くやいなや何かを考える素振りをしてこっちに視線を移す。



