すると弦さんはそんな私の思いを悟ったのか、次の瞬間真顔になって私を見据えてきた。


「それはひどく器のちっさい男の話だろう?まぁ少なからず俺だったら逆に嬉しいけどな。むしろ陰で泣かれるよりはずっとましだ。本気で惚れた女なら尚更にな」


弦さんの白熱した言葉に思わず真剣に見つめ返してしまった。

そして瞬きも忘れてガン見する。


「多少の我が儘なら男にとってはいいスパイスになるだろ」


そう言うもんだから私の頬は急激に熱をもつ。

果たしてコウさんもそうなのだろうか?

「今すぐ会いたい」だなんて言ってみたらどんな顔が返ってくるのだろう…?


「……あのクールなコウさんでもスパイスになりますかね?」

「なんだよ、その自信無さげな顔は。だったら一度ここで試してみようか?」

「えっ」

「嬢ちゃん、ちょと携帯貸してみな」


戸惑う私に「ほら」と少しぶっきらぼうに弦さんの手が伸びてくる。

次第にそれは強制的な雰囲気に変わり、少し恐ろしくなった私は弦さんのお言葉の通り、自分の携帯電話を目の前の彼に恐る恐る手渡した。


「たくっ、嬢ちゃんはよ、遠慮し過ぎだ」


そう告げた合間にも弦さんはコウさんの履歴を見つけて素早くコール音を響かせる。

私はアワアワとその状況を傍観することしかできず、だけどすぐにハッと我に返った私は慌てて立ち上がり弦さんから携帯を取り返そうとしたものの、それは呆気なく阻止されてしまう。


「俺に任せてみろって、悪いようにはしねぇから」


うーわ、弦さんって思いの外強引だ。素早すぎるよ。


そしてどうすることもできない私は思わず手を組み祈るポーズを作る。

お願い!どうか今は出ませんように。

仕事中でありますようにと目をぎゅっと瞑る。