「こんなとこで寝ると風邪引くだろ?」
肩を揺すって起こしてみる。
寝るのは別に構わないが、ちゃんとベッドで寝てほしい。
こんなことで風邪でも引いたら本末転倒。洒落にならない。
今まで何回も言ってきたのに一向に直る気配がない彼女にため息がこぼれ落ちる。
「おい、梨央」
強めに肩を揺すると、そこでようやく目の前の瞳が「ん…」と開かれたので、俺はそんな彼女と視線を合わせる。
もう一度ベッドに行けと即そうとしたのだけれどそれは突然、彼女から放たれた突拍子もない言葉にかき消されてしまう。
「…クリスマス……」
「えっ」
「一緒に過ごしましょうね」
ニコリと笑った梨央に一瞬何事かと動きを止めた。
「過ごさないと浮気しちゃいますよ」
言い終わらないうちに両手が首に巻き付いてきて、やっぱりニコリと笑われた。
そのまま顔が近づくと唇に温かな感触。不意討ちのキスをされて、俺は固まった。
「約束ですよ」
そしてまた彼女の瞳はゆっくり閉じられ、夢の世界へと旅立っていく。
それが素面なのか寝惚けてるのかよく分からないが、この様子からしてきっと後者の方だろう。
俺はただ呆然とし、まじまじと見することしかできず、次第に頭が痛くなる。



