「昔からよく言ってましたよね。政略的な繋がりは好きじゃないと。貴方自身も昔、縁談話が持ち上がった時片っ端から断ってたのを思い出しますよ。
あの時の心底嫌そうな顔は今でも忘れない。正直見ていてた大変そうだった」

「…確かに。次から次へとくる縁談話に嫌気がさしていたからね。
それにどうもそういった女性は好かんよ。断りきれず数人付き合ったことも正直あるが、従順すぎて何を考えてるのか分からないタイプや、やたらプライドが高くて気が強いタイプもいてな。おまけに自分の要望ばかり押し付けてくる。育ちはいいかもしれないが、それだけじゃ気持ちがまったく動かなくてね」

「なるほど」

「実際わたしと結婚がしたい訳じゃなく、真白という家柄と結婚したいというのが目に見えて伝わってきた瞬間結婚相手は自分で探そうと本気で思ったよ」

「貴方も難しい立場ですからね。気持ちは察しますよ」

「だから晃一にも将来のことは自分で決めてくれたらいいと思ってる。せめて家庭ぐらいは心落ち着けて安らげる場所であってほしいというのが親としての意見でね」

「同感です」

確かに刑事という仕事は常に危険と隣り合わせの職業だ。いつ命を狙われたっておかしくない状況の中、少しでも安心していられる場所があればと思うのは俺も同じ。

だから俺は丈さんの考えが好きだ。ガチガチの組織の中にいるにも関わらず、型にはまろうとしない姿勢は見ていてスカッとするし、俺もこうありたいという憧れは昔から変わらない。

こういう人柄だこそ、俺はこの人と長い間相棒ができてたのかもしれない。