「しかし、なっちゃんに言われてだなんて相変わらず彼女には弱いんですね。…けど、正直それだけじゃないんじゃないですか?単に親心だけじゃ普通あそこまでしないでしょう」
グラスを拭く手を止め前を向く。
俺の核心をついた質問に丈さんは顔色を変えることなく頷いた。
「ああ、最近やたら癒着を求められる機会が多くてな。とくに政治家のお偉いさん達が入れ替わり見合い話をわたしの所へもってくる。ことあることにうちとの繋がりを求めてくるのが少々疎ましくてな」
「そりゃ貴方を身内にもてばこんな都合のいいことはないでしょう。警察を味方にしたら色々と彼らもやりやすいでしょうし」
「たく、考えることが浅はかすぎて正直すかん。魂胆が見えすぎてどうも素直に応じれなくてね」
「まぁ、あの変の連中はみんな自分の保身が第一ですからね。おまけに晃一も結婚適齢期だ。警察トップの将来有望な長男が独身ときたらそれはみんな狙うでしょう」
「正直うんざりだがな」
心底嫌そうな顔した丈さんに「ふっ」と口が緩みそうになる。
相変わらずなこの性格も変わっていない。昔と今の様子を見比べてどことなくホッとして気が抜ける。



