やれやれ…と、俺も今度こそ実家を後にする。
お袋にはこんな感じで昔から振り回されてばかりだが。…さて、帰って俺はなんて梨央に話を持ち掛けるか。彼女はそれを聞いてどんな反応をするのかと、複雑な思いで帰宅する。
その夜タイミングを見計らい、親父の正体は明かさず、それとなく梨央に打ち明けると予想外の反応が飛んできた。
「え、行きたいです!私も行っていいんですか?」
思ってもない明るい表情で返された。むしろ好意的に俺に詰め寄ってくる。
「実は前からコウさんのご両親はどんな人だろうと思ってたんです。
しかも結婚記念日という特別な日に呼んでもらえるなんて光栄です!」
実際親父とは会ってるけどな。
そう思いつつ、そんなもんだろうか?と喜ぶ梨央を何気無く見つめると、やっぱり無邪気で嬉しそうな顔を向けられる。
「誘ってくれてありがとうございます。あと、生け花もとっても素敵です」
「…ああ…」
その純粋な表情に思わず面食らうが、きっと梨央は分かってない。この意味を。この誘いを受け入れるということはどういうことか。ことの重大さを分かっていない気がして俺の方が慎重になる。
「本当にいいのか?」
きっともう逃げられない。
親父とお袋のあの様子からして、梨央を紹介した時点で「結婚」という結びつきが強くなるのは目に見えている。
俺もそれなりの年だ。見合い話を断ってまで紹介する相手に対しての決意、心構えはできている。



