…と、嘆いたところで今さらどうにもならない。お袋の身勝手な言い分は続く。
「あ、そう。どうしても口を割らないっていうならこれからずっとあなたの好きな椎茸を毎日これでもかってぐらい送り続けるわよ」
「…何でだよ…」
ここでようやく俺が折れた。
正直面倒くさい。全く関係のない椎茸の話を出されてはさすがに馬鹿馬鹿しくなってくる。ここで俺が折れないと家にも帰れない気がして根負けする。
「…分かった。俺も連れてくよ」
ため息混じりに呟いた。
元々いつかは…、とは思っていた。それが少々早まったと思えばいい。
こんな風に毎回詰め寄られるのを想像したらそれこそげんなりする。
「その日、梨央も連れてくよ」
「あら、本当!ふふ、やっと認めたわね」
「…ああ」
再度頷くと、目の前の表情が一変して明るくなる。眼を輝かせてにっこりと微笑んだお袋は持っていた生け花を俺に機嫌良く差し出した。
「梨央さんっていうのね。可愛らしい名前。来月が楽しみだわ。ならこれ、良かったら梨央さんに差し上げて?」
調子がいいお袋はすっかりご満悦。今日生けたばかりのそれを俺に強引に押し付けると、「さっそく丈さんにも報告しなきゃ」とあっさり俺から背を向けた。



