「晃一、お前はまだまだ詰めが甘い。梨央さんが普段からあの辺りを通っていたのは分かってた筈だ。分かってたならいつかこうなることも予測ができたはずじゃないのか?」
判断が遅いと言われ、俺も素直に気持ちを改める。
「ああ、その通りだ。肝に銘じるよ」
「何の為に今の役職に就いたんだ。他の誰でもない。お前にはそれを阻止する権力や権限があるんだ。それを活用しなくてどうする。まずは身近な人を守れ。大切な人を守れない奴が国民の平和なんて守れるはずがないだろ」
グサリと響くものがある。
親父の鋭い視線を向けられて返す言葉が見つからない。
本来親父はざっくばらんな性格だ。けど仕事になると人が変わったように冷徹になる。だから職場での親父の顔しか知らない連中は皆親父を恐れてる。
雲の上の存在かのような扱いは俺も同じ。
もし仮に、本気で怒らせたなら誰か一人ぐらい平然と抹消できる力はあるんじゃないかと思ってる。
それぐらい親父には強い権力と権限がある。
「ただ、くれぐれも判断は間違えるなよ。正しいことに権力は使え」
「ああ、分かってる」
あと、強い信念も…
変わらずの親父の言葉に俺は改めて自分の姿勢を正す。身を引き締める思いで最後会話を終えた。



