「晃一嫁にするなら多少振り回されるぐらいの相手が丁度いいと思うぞ」
「は？」
「まぁ、一番はお互いが信頼できる相手が一番だがな。お前が自信を持って決めた相手なら文句は言わない。だから安心して彼女をうちに連れてきなさい。できれば早く。母さんが首を長くして待ってるからな」
「……」
やっぱり返答に困る。無表情で押し黙ったけど、「まぁ、近いうちに」とやんわり言い残して席を立つ。
なんか調子が狂う…
だが部屋を出ようとしてあることを思い出した。
「そう言えば親父なんだろ？◯◯町の裏通りの件、あっさり手を回したのは」
昨日梨央が絡まれた場所だ。
今日の朝、さっそく取り締まりを厳しくしろと、敦士に手配を頼んだらもうすでに対処済みだと返ってきた。
「なに、あそこは以前から素行が悪い。引ったくりや暴行やらで被害届けが出てた場所だからな。わたしも実際に目の当たりにして速やかに対処しただけだ」
確かに親父の言う通りだった。納得して俺は罰の悪い顔を向ける。
「悪かった。梨央が世話になったよ。正直親父があの場にいてくれて助かった」
もしあの場に親父がいなかったらと思うとゾッとする。
それを伝えた直後、親父の顔からスッと笑みが消える。
