「生憎うちのトップのお偉いさんが嫌がらせのように次々と厄介な案件を回してくるんでね…」
「ほう、それは中間管理職の悲しい性じゃないか。だが自分で選んだ道だ。頑張りなさい」
「……」
「ところで警察内で噂になってるそうじゃないか。お前の恋人の存在が。私のところまで耳にするぐらいだぞ」
何を言い出すかと思えば。予期せぬ発言に眉を寄せる。
「だから何だよ…」
「早くうちに連れてきなさい」
「は?」
「母さんが会いたがってる」
それを聞いた瞬間片方の眉が上がる。すぐに嫌な直感が。
「…まさか、そんなことで梨央に近付いただなんて言わないよな?」
あり得ない。と思いながら親父を見ると、急に態度が潮らしく変わる。
「実はな。母さんが梨央さんに会いたいと言ってきかないんだよ」
「…は?」
「どうして晃一から何の連絡がないのだとか。晃一はいつ彼女を家に連れてくるんだとか、あの晃一が真剣に付き合ってる子はどんな子だとか。それは興味津々でな。そんな小言を毎日言われてみろ。さすがのわしもスルーできん。動かざるを得ない状況になるだろうが」



