「とりあえず俺は晃一くんの恋の検討を祈る。でも彼女可愛いからな〜。ほったらかし過ぎて他の男に奪われないように気を付けろよ」

「アホか」

「まぁまぁ、そん時は友達のこの俺が相談に乗ってやるから遠慮するなよ。大船に乗ったつもりでさ」


泥舟の間違いだろ。

と、言いかけそうになってやめた。

不意にマンションから出てきた被疑者に目が止まり、俺はすぐさま煙草の火を消し敦士に視線を向けた。


「行くぞ」

「ああ」


この事件が一段落したら梨央にまたらしくない言葉の一つでもかけるのかもしれない。

彼女が戸惑うほどの熱いものを。

そんな思いを胸に俺は素早く車から降り、被疑者の元へと駆け出した。