「聞かせてもらおうか。下手な子芝居までして梨央に近付いた理由を」
だから終始穏やかじゃない。
当たり前だが親父を睨む。
「しかもどこぞの社長だなんて嘘までついてどんな魂胆だ」
きっと親父は全て計算ずくで梨央に近付いたのだろう。何もかも計画的に彼女に接触したのは明確だ。
「意図を説明しろ、意図を」
「まあまあ、そんなに感情的にならんでもいいじゃないか。私は何も彼女を虐める為に会った訳じゃないし」
「当たり前だ」
「まあ、落ち着きなさい。ほら、そこに一度座りなさい。ちゃんと説明するからゆっくり話そうじゃないか。久しぶりに会ったんだ」
「ちっ…」
親父に即されて渋々目の前のソファーに座る。ドカッと座るとすぐに親父もまたテーブルを挟み、向かい合うように腰を下ろす。
「だがこんなに早くお前が動くとはな」
「当たり前だ。梨央を出しに使いやがって。やることが卑怯だろ」
「くっ、それは悪かった。けど元はと言えばお前が悪い。ここ何年もまともに家に帰ってないだろう。仕事が忙しいのも分かるが、せめて年に一度ぐらいは顔を出したらどうだ。母さんも会いたがってる」
「どの立場でそれを言うんだよ…」
そのくそ忙しい仕事の内容をどんどん押し付けてくるのは上の立場である親父だろうが。
今じゃ殆んどが事務作業だが、その数は半端ない。



