「お、怒るのは後にして、とりあえずスーツを見てくださいっ」
「ち、何でだよ…」
「後でちゃんと怒られるから。お願い!だって何か持ち主の手掛かりが見つかるかもしれないでしょ?ほら、刑事の得意分野じゃないんですか?身元確認とか身辺調査とか」
「なんだよ、その身勝手な言い分は…」
「優秀な刑事なら困ってる彼女を助けて下さい!本当に困ってるんだから」
「……」
「ね、署長!」
「……」
「頼りにしてます署長!」
「…たく…」
渋々だったけど、すごーく睨まれたけど、根負けしたようにドカッとソファーに座るコウさん。そのまま手に持ったスーツに目を向け始めた彼に感謝の念を送る。
「コウさん、ありが…」
「この報酬は高いからな。後でたっぷり謝礼してもらう」
「…っ!」
ぞっとしたけれど、致し方ない。
悪いのは全部私です。すみません。と、コウさんの様子をソファー裏からひょっこり顔だけを出して伺うと、少しして調べていたコウさんの動きがピタリと止まる。
「あ、何か手掛かりがありました?」
「…梨央…、その人の名前は?名前とかは聞いたのか?」
「え…名前ですか?えっと、ジョウさんですが」
「…は?」
「名字は分からないけど、名前は丈二さんです」
「…じょうじ…」



