俺の前で泣いたり笑ったり怒ったり、色んな表情を見せてくる梨央。
最初は少し照れ臭そうに、だけど次第にそれは甘い笑顔に変わっていくのだけど、別れ際になると淋しそうな笑顔を作る。
たぶん本人は気付いてないのだろう。
彼女はどんな時も笑顔で別れようとするけど、きっと本心は違う。
俺に対してどこか遠慮してるところが見てとれるし、あまり我が儘を言わない。
ていうより我が儘なんて聞いた事がない。
それどころかいつ会えるか分からない俺に対し、「仕事頑張ってくださいね」と励ましさえくれる。
それが健気で痛々しくもあり、俺は何とも言えない気持ちをもて余す。
きっと以前あった弦さんの悪戯はそんな俺達を見かねての思いやりなのだろう。
それがわかるからこそ、俺は彼女に会えた時、必要以上に彼女を腕の中に納めたくなる。
そして甘やかしたくなる。
正直一人の女に対してこんな気持ちになるのは初めてで、戸惑いさえ覚えるが、自分でもらしくないと思う行動を押さえることができなかった。



