「それより、随分と濡れてしまったね」
「あ…」
ふわりと掛けられたのはおじ様が着ていた上質なスーツの上着だった。
彼は当たり前のようにそうすると、自分だって濡れてるのに私の肩を抱き後ろに立っていたもう1人の男性の元へと歩き出す。
「神城、このまま彼女を送ってく。悪いが車に乗せてやってくれ」
「はい。かしこまりました」
「それと今回のことだかすぐに対処を頼む。いいな」
「もちろん心得ております。こちらで全て対処しておきます」
傘を差し、姿勢正しく頭を下げたこの人は秘書か何かだろうか?
だとしたらこのおじ様は?
以前会った時とはかなりイメージが違う。凛として行動力があり、ビシッと着こなしたスーツからはただのおじ様じゃないことは明確だ。
少しビックリ、いやだいぶビックリしたけど。私に向けられる瞳は優しくやっぱり丁寧だったため、全く嫌な感じはしなかった。
「……えっ」
が…、車に乗せられた瞬間驚いた。
絵に描いたような高級車。これは…まさかのセンチュリー?それに運転手までいるってことは、
「あ、あの、おじ様は社長さんか何かでしょうか?」
「丈二」
「は?」
「私の名前は丈二です。改めて宜しくお願いします。お嬢さん」
「…えっと…」
「いやジョウでいいですよ。親しい人達にはそう呼ばれているのであなたにもそう呼んで貰えたら」
「…はい。…じゃあ、…ジョウ、さん?あの、わたし、私は梨央です。中園梨央」



