そう思えるほど彼女との出会いは特別なものだった。


「コウさん、あの時私を見つけてくれてありがとうございます」

「ああ」


考えるより先に梨央の頭を引き寄せていた。

至近距離で視線を合わせ、少し潤みを持った目元にキスを落とす。

この瞳は俺だけのもの。

これから先も俺だけを見つめていればいい。

俺だけを見て笑ってくれたらそれで…



「…あ、と、コウさん。最後にとびっきりの我が儘言ってもいいですか?」


「なに?」と耳を傾けると少し躊躇いを見せ、恥ずかしそうに梨央の唇が耳元に近づいた。

「ーーー」


(ーーなんだ、そんなこと……)


「お前がいいなら遠慮なく。明日にでもそうしようか」


俺はいつだって、いつでも受け入れる準備はできている。
それが彼女の願いなら尚更のこと。


「でもいいか、そうしたらもう本当に逃げられなくなるぞ」

「いいの。逃げるつもりはありません」


見つめ合い、気持ちを確かめ合いながらお互い微笑みあった。


「じゃあ、とりあえず今日は帰りにケーキでも買って帰ろうか」


そう言った俺に嬉しそうに頷いた彼女と今度は唇でキスを交わす。

君の思いと寄り添って。

この先もずっと笑い合えたらいい。

俺が君を守っていく。

大切な君がいつまでも無邪気に笑っていられるよう。

誰よりも近い距離で温もりを感じられるように…