愛情の鎖 「番外編」〜すれ違いは蜜の味〜。


「お前に梨央を慰める権利はない」


その声の持ち主はコウさんだった。

今までずっと私達のやり取りを黙って見ていた彼が、突然慎ちゃんの手を払い除け、私の手を掴みグイッと引き寄せる。


「お前が梨央に触れる資格もない」


その声はいつもに増して低く冷ややかで、そのまま肩を抱かれ胸に押し付けられた瞬間、彼の鼓動が少し速いのに気が付いた。


「前にも忠告したはずだ。お前の身勝手な思いで梨央を窮地に追い込むなって」

「…コウさ……」

「そんなあんたがどんな言葉をかけようと、今の梨央には酷なだけだ」


ゴクリ、慎ちゃんが息を飲むのが分かった。

そして私も。まるで慎ちゃんの思いもこうなることを全て分かっていたようなコウさんの物言いに驚きを隠せない。

それ以前に二人は私の知らないところで接触していたの?


「こんな風になる前になんでもっとちゃんと話し合っておかなかった。彼女のことを一方的に責める前にまず、あんたの落ち度にしっかり目を向けるべきだろう?」


背中に回された腕にぐっと力がこもる。

コウさんの声は感情的とまでは言えなかったけれど、ひどく苛立っているようには感じ、ハラハラと急に落ち着かなくなってしまう。