私は固まったまま、何も言うことが出来なかった。
思わず俯くと「…梨央……」と慎ちゃんが心配するように私を呼ぶ声が聞こえた。
それに答えるように上を向くと、やっぱり申し訳なさそうな彼の表情が視界に入り込んでくる。
「本当にごめん、迷惑かけて…。ビックリさせたよな?」
その問いかけに私はただ黙って小さく頷いた。
正直顔が合わせずらかったけど、このまま合わせないわけにもいかない。
だけど慎ちゃんの気持ちを知った今、どんな顔を向けたらいいのかも分からない。
「軽蔑した?よな。…だけど…、彼女が言ってたことは否定しない。全部本当のことなんだ」
私は瞳を大きくし、慎ちゃんがこっちへ歩み寄って来るのを黙って見届ける。
「この3年間梨央を忘れたことは一度もない。ずっと変わらず思ってた。こんなこと言うと困らせるのは分かってるんだけど、でも俺…、どんなに頑張っても梨央以上に好きになれる人ができないんだ」
慎ちゃんが切なそうに見つめてくるから、私も目を反らすことが出来なかった。
彼が今から言うことがけっしていい加減な気持ちじゃないってことが分かるから、私も逃げずに向かい合わなきゃいけない。



