そこにはコウさんの職場の後輩、西田さんがいた。
西田さんは「ごめんね、勝手に上がらせてもらいますよ」と私に頭を下げると、「お久しぶりっす」と私に爽やかな笑みを見せ、コウさんの元へと歩いていく。
「コウさん遅くなってすみません。電話で言ってた被疑者ってこの女性っすか?」
「ああ、忙しい時に悪いな。あとの始末頼んでもいいか?」
「了解っす。正直この件は管轄外っすけど、コウさんの頼みじゃ断れないですからね」
どうやら西田さんに応援を頼んだようだった。
話の流れでそう確信し、私はそんな二人のやりとりに耳を傾ける。
「とりあえず署の方でもう一度詳しく話し聞かせてもらうから。一応このまま逮捕させてもらいますよ」
西田さんが由香さんにそう告げて、コウさんとバトンタッチした。
そしてそのまま両手に手錠をかけられたのをみた瞬間、やっぱり内心ざわざわと心が痛む。
「お願いします……」
「あんたにも後で署にきて話しを聞かせてもらうから、そのつもりで」
頭を下げさ慎ちゃんに西田さんは少しキツイ言い方をした。
もしかしたらある程度の話は聞いてるのかもしれない。
由香さんはそんな状況にさすがに少し怯む様子を見せていたけれど、「いくぞ」と西田さんに連行され私の隣をすれ違う時にはすでに冷静な表情に戻っていた。
私と目が合うやいなや、やっぱりキッと憎しみを込めて睨んでくる姿は印象的で、
「私は謝らないから」
そう言って最後まで私の心を乱していった。



