彼女の悲痛な叫び声が部屋に響き渡る。
私は何も言えなかった。
ただその場に立ち尽くし、彼女の放った一言一言の苦しげな怒りを受け止める。
耐えきれず鼓動が激しく上がり、
部屋中の空気か緊迫したものに変わっていくと、急に息苦しい感覚に襲われた。
「…だからって彼女を目の敵にするのは違うだろ?梨央は何も悪くない。文句があるなら全部俺にぶつければいいことじゃないか。彼女に当たるのは間違ってる!」
慎ちゃんの言い分はよくわかるけど、実際にはそうはいかない。
女性の嫉妬は女性に向かう。
しかも強い感情が含まれると尚更男性より女性へと敵意が向けられるのをよく知っている。
宗一郎さんの時がそうだった為、嫌な記憶が甦えってくる。
ここまでの嫌がらせはなかったものの、宗一郎さんと住んでた頃、彼に好意をもってる女性からよくやっかみの言葉や視線を向けられたことがあった。
だから分かるんだ。
恋愛は綺麗事じゃないって。
頭では分かっていてもそれを素直に認められないのが恋なんだ。怒りの矛先がどうしても相手の女性に向いてしまうから余計に後味が悪くなる。
彼女のように見た目綺麗でプライドが高そうなタイプなら尚更そうなんだと思う。



