だから悔しいのだと、大粒の涙を流して彼女は訴えかける。
「あなたは私を好きになろうとはしてくれたけど、けっして愛してくれようとはしてくれなかった」
それが痛くて悲しい。
そう訴えかけてるようで、それを聞いた瞬間私まで何故だか切ない感情が押し寄せた。
後ろにいるコウさんは無表情のまま、そんな二人のやり取りをただ黙って聞いているようだった。
「あなたの心にはいつも梨央さんがいた。弁護士になったのだって全て彼女を救いたかっからでしょ?知ってるのよ。毎日遅くまで事務所に残って調べ事をしてたのも全部彼女の為。澤田組の情報を集めてあなたは必死だったんだもんね?」
「…えっ……」
そこまで聞いてかなり大きなショックを受ける。
まさか慎ちゃんがそんなことを……?
この3年の間にそんなことまで……?
まるで大きなハンマーで殴られたような強い衝撃を感じ。信じられない気持ちで彼を見る。
「だから許せなかった。ニュースであの男が逮捕されたって知った時、ああ…、この生活も長くないんだって思った。私は捨てられるのかもしれないって覚悟も決めたのよ」
「…だったら何で…、そもそも別れを最初に切り出してきたのはお前だろ?なのにどうして今更…」
「それでも納得できなかったの!私が別れ話をした時のあなたの表情は今でも忘れない。心底ホッとしたような顔を向けたのよ。そして何も反論もしないまま私の言われるままに離婚届に判を押したことがどうしても許せなかったのっ!」



