愛情の鎖 「番外編」〜すれ違いは蜜の味〜。


彼女の怒りが慎ちゃんに向けられた。

繰り広げられる会話にますます困惑が増していくばかりだったけれど、それ以前に彼女が言っていることの内容がやっぱり理解できない。


「だからってな、やって良いことと悪いことがあるだろ!お前のしようとしたことは一歩間違えたら殺人になってたのかもしれないんだぞ!れっきとした犯罪行為だ!」

「何もそこまで…。私はただちょっとしたぼや騒ぎを起こそうとして困らせようとしただけよ。本気で燃やそうとしてた訳じゃない!」

「同じことだ!ふざけるのもいい加減にしろ!!」

「ちょ、ちょと……」


見かねた私はたまらず仲裁に入ろうとする。

だけどそれより驚いたことが二つ、慎ちゃんがこんな風に怒りをあらわにし、怒鳴っているところを初めて見たこと。

そしてもう一つは、彼女が本当に私達家族を恨んでいるということだ。


「こんなボケッとした子のどこがいいのよ!あなたがずっと思い続けるほど、彼女は私よりも価値があるっていうの?」


再び私に敵意を向けられた瞬間、えっ?と当たり前だけどフリーズしたように固まった。

彼女の憎しみが容赦なく向けられると共に、私へと放たれた言葉が胸の奥に突き刺さったから。


「いつまでも初恋の女が忘れられないなんてバッカみたい!」

「…それってどういう…」

「そのままの意味よ。慎一はね、ずっとあなたのことが忘れられなかったの!私と結婚したのもあなたが遠くに行ってしまったから。どうにもできない寂しさを紛らわすために仕方なく一緒になったのよ!」