「お、怒ってます?」
「怒ってないように見えるか?」
う……。
予想通りの返しにますます私は縮こまる。
さぁどうしようかと悩んだけれど、ここは正直に。素直に謝ったほうがいいよね?
「あ、とっ、ごめんなさい…。仕事の邪魔でしたよね?」
もしかしたら途中で抜けてきてくれたのかもしれない。
だってよく見れば額にうっすら汗の痕が……。
此処に来るまでけっこう大変だったのかもしれないと思うと余計に申し訳なさが募っていく。
私はいたたまれずまたコウさんから視線を反らし、はめたばかりのシートベルトに手をかけた。
やっぱり帰った方が……
「別にそんなことで怒ってる訳じゃねーよ」
……けど、コウさんはそう言って私の思いを打ち切った。
シートベルトを外そうとした手を掴み、素早く私の動きを静止する。
「今度から此処に来るときはLINEでも何でもいいから俺に連絡しろ。分かったな?」
その意味が分からず、私は再び顔を上げる。
「なにも此処に来るなとは言わない。けどな、今日みたいに遅くなるようなら俺を呼べ。帰りは俺が送ってくから」



