それからどれぐらい経ったのか、モゾモゾと動く気配を感じ、俺は重たい瞼をゆっくり上げた。

顔を上げると体から何か温かい感触がずり落ち、それが毛布だと分かるとハッとしてベッドに寝てる梨央の方へと振り返った。


「あ、起きました?」


寝ていたはずの梨央はすでに起きていた。

上半身を起こし、ペットボトルを持ちながら、さっきよりスッキリとした顔色で俺を見下ろしてくる。


「来てくれてたんですね?」

「悪い、寝てたよな」

「別にそれはいいんですけど、そんな所で寝ちゃダメですよ。なんでちゃんとクローゼットから布団出さなかったんですか」


俺の今の状態を見ながら梨央が不満げな顔になる。

まぁ、怒られるのも無理もない。

俺はいつの間にかうたた寝をしてしまっていたらしい。

ベッドを背もたれにし、床にあぐらをかきながらうとうとと。


「コウさんが風邪を引いたらどうするんですか?」


本気で心配する素振りが可愛くて、つい茶化すような口ぶりになる。


「風邪引いた張本人に言われたくねーけどな」

「引いたから注意してるんですよ。本気でヤバイですよ。今年の風邪は」


やたら深刻な顔して訴えかけてくる梨央が可笑しくて、ついに表情まで緩めてしまった。