そんな本音に内心ため息をつきつつも、この状況から目をそらすことはできない。

いつかこんな風になるのではないかと、心の奥底で何となく感じ取っていた。だからこそ、このままこの男の真意を見逃すことはできなかった。


「それはずいぶん積極的なことですね。だがその必要は……」

「彼女、可愛いでしょ?」


言葉を被せられ、眉を潜めそうな言葉が向けられる。


「普段ほんわかしてる割には真面目でしっかりしてて。だけど時々意地っ張りで頑固。それなのに一度気を許せば心まで癒してくれる屈託のない笑顔を見せてくれる。そんな彼女が可愛くて仕方ないんじゃないんですか?」


再び沈黙が訪れる。

俺は少しだけ目を大きくしたが、すぐにまた戻した。

一瞬何が言いたいのが分からなかったが、目の前の瞳がより鋭いものに変わった時、俺は明らかな敵意を向けられたんだと悟る。


「俺も同じです。彼女が可愛くて仕方がない。それは昔から何一つ変わらない。あの男に梨央を取られるまでの18年、彼女の一つ一つの表情を守ってきたのは他でもない俺だから」