そして、あたしは恋をした。


実の兄であるカオルと――。


兄の子供を、この身に孕んで――。





だが、それがなんだというのだろう。


一切は皆空なのだ。



「いいかい、世界の一切は縁起によって存在しているんだ」

「よくわかんなあい」

「縁起とは関係性のことだよ。世界はすべて相互関係により成立しているんだ」

「アートマンを否定しているということ?」

「そうだね。一切は空ということさ」



すべての無常なるものは、あたしたちの妄念が作り出したまやかし。

妄念とは、すなわち、先入観。

それを教えてくれたのはカオルではなかったか。