コクンと頷くと、彼は白い歯を見せて笑う。 そういえば、私は名前知らないな。 名前の聞き方ですら忘れてしまった私に、気付いてはいないけれど教えてくれた。 「あっ、俺は住野陽太。呼び捨てで」 呼び捨て。 友達になったばかりなのに、そんな高度なことが果たしてできるのだろうか。 親しくなればなるほど、裏切られたときの悲しみは大きい。 だからずっと目を背けてきた。