揺れる黒髪。 風が桜の花びらと一緒に吹いて、 私の髪に付く。 そんなこと知らないまま、スマホ片手に迷子になりかけていた。 〝あれ…なんで着かないんだろ〟 不安になりながら、辺りを見回す。 あるのはすっかりピンクに色づいた木々と閑静な住宅街のみ。 ここ坂上旭町は、その名の通り坂の上に位置する。 私がこれから通う高等学校も、この町にあるはずなんだけど…。 「あのー」