そんな俺は、まだ好きな人に出会ったことがない。


初恋とか、そういうのに全く興味がないわけじゃないし、かといって焦る必要もないと思っていた。



ーそう、入学式の日のあのときまでは。





風が桜の花びらと一緒に吹いて、



艶のある、きれいな黒髪を揺らす。


その花びらが頭に付いているのというのに、
気にせずスマホを見ている。


気づいてないのか。


新しい制服を着ているから、俺と同じ新入生だな。


いつものように、優しく花びらが付いていることを教えようとした。