「君が誰と付き合おうが,僕の気持は変わらないよ。
 僕も形ばかりの結婚をしているしね。
 君もそろそろ,手近な男とそういうことを考え始めてもおかしくない。
 お互い大人なんだ、気にしないよ。
 僕は君といれば気が休まるし,君が必要だと思ってる。
 ……少なくとも,僕の側に君を切る理由がない」

「そんな」

 私は…
 そんなつもりで付き合ってたんじゃありません。
 ずっとあなた一人だったんですよ?

「あなたって人は__どこまで」

 自分勝手なことを言うのか。
 けれどほんの少し前までは,それすら強さだと、勘違いしていたのだ。

 悲しみなのか怒りなのか,それとも自分が情けないのか。
 どす黒い感情を対処しきれず,また言葉に詰まってしまう。

 と,何を勘違いしたのか,彼は私の震えている手を両手ですくい取った。

「それに___君にだって僕のコトが必要だろう?
 君に全てを教えた僕を,忘れられるとは思えないけど」

「や…」

 男性にしては細くて白い指が,私の指の間をスルリと撫でた。