火曜日の夜。

「うわっ,どうしたのこれ。スキヤキ?!
 オマエ,金欠じゃなかったのかよ」

 
 得意先から直行で私の家にやってきた彼は,切りそろえた材料を見て目を丸くした。


「フフフ,実は…少し臨時収入がありまして,ね。
 ま,昨日がショボかったから,ささやかなお詫びってやつ?」
 
 今日,かなり前に友人に貸していたお金が返ってきた。貸したことすら忘れていたから,ちょっとした臨時収入。

 得意げに言った私に,彼は呆れ顔でため息をついた。

「お前ね。
 金貸し屋に勤めてる奴が貸した金を忘れるなんて、そんなお人好しでどーすんの。
 しかも,俺になんか奮発してる場合かよ」

「いいのいいの,ささ。座って座って」

 ニコニコしながら私は,彼をコタツの向かいに座らせた。

 何でも美味しいと言ってくれるコイツに食べさせるのが,私はだんだん楽しくなってきていた。