復讐劇は苦い恋の味

ロビーを抜け会計窓口に戻る途中、ふと目に入ったひとりの人物が気になり、足を止めた。

「あれ……あの人……」

ロビーの椅子の背もたれに体重を預けぐったりしている男性は、明らかに体調が優れなそうだ。

周囲を見回すも、誰か付き添いの人がいる気配はない。ひとりで来たのかな。

事務員として働き始めてもう十年になる。

大きな総合病院だから待たされるのは仕方ないと思うけれど、それが原因で体調を崩す患者さんを何人も見てきた。

中には自分からなかなか申告できない患者さんもいる。

心配になり近づき、声を掛けた。

「あの、大丈夫ですか? 診察は終わったんですか?」

私の声に男性はゆっくりと顔を上げた。

見た目は三十代前後の男性で、案の定やっぱり顔色が優れない。

「診察は……予約なしで来たので、まだ順番が回ってこなくて……。でも診察室前はいっぱいで座れなくて、だからここに……」

途切れ途切れに話す男性。

この時間になっても順番が回ってこないってことは、毎日たくさんの予約患者でいっぱいの内科かな。