復讐劇は苦い恋の味

「だから俺は反面教師じゃないけど、父親のようにはなりたくないんです」

彼の足は止まり、私も遅れて足を止め彼に目を向ける。

視線がかち合うと、君嶋くんは大きく瞳を揺らした。

「愛する人や子供に寂しい思いをさせたくない。でも仕事も厳かにしたくない。……両方守れる人間になりたいと」

君嶋くん……。

力強い言葉なのに、なぜか彼は今にも泣き出してしまいそうなほど、瞳を揺らしている。


無理しているように見えるのは、気のせい? ……ううん、気のせいじゃないよね。無理しているんだ、昔の私のように。

私もそうだった。両親を突然の事故で亡くし、これ以上大切な家族を失いたくなくて必死だった。

圭を大学まで行かせて、自分のことなんて二の次。

君嶋くんのように圭を守れる人間になりたいと願っていた。

「すみません、変な話をしてしまって。……この後ですが、近くにある水族館に行きませんか?」

表情を崩し、そんな提案をしてきた君嶋くん。

「……はい」

返事をするものの、心の中はモヤモヤしている。