復讐劇は苦い恋の味

それほど私にとっても幸せな毎日だったから。

けれどすぐに我に返る。

わ、私ってば、なんで君嶋くんなんかにこんな話をしているんだろうと。

「あの……」

声を上げ隣に立つ彼を見る。

すると君嶋くんは優しい眼差しを私に向けていた。

「素敵なエピソードですね」

「えっ……?」

驚く私に君嶋くんは微笑んだ。


「俺の亡くなった父親は忙しい人でした。だから普段から家に居ることは少なくて、一緒に過ごした思い出もありません。……母さんはいつも寂しそうでした」

すると君嶋くんは「出ましょうか」と言い、先に歩き出した。

「あ、はい」

私も歩き出し、彼と肩を並べる。たくさんの人とすれ違いながら君嶋くんは続けた。


「俺も幼い頃は寂しい思いをさせられました。でも母さんを見たら“寂しい”とは言えませんでした。……父親が家にいないのが当たりの生活は、俺が大きくなっても続き、俺は父親と親子らしいやり取りも会話もすることなく、父親を亡くしました」

そういえば叔母さん、言っていたよね。君嶋くんも二十歳の時に父親を突然亡くしたって。

思い出していると、君嶋くんの歩くスピードは緩んでいく。