復讐劇は苦い恋の味

もう十年も勤めていると、ベテランの域に達する。

会計窓口や請求事務業務。入退院受付業務や、外来クラークなど医療事務の仕事を一通りこなしてきた。

「違うわよ、仕事の話じゃなくて恋愛の方よ」

「えっ! れ、恋愛!?」

話の流れからして、てっきり仕事の話かと思いきや、まさかの恋愛話にギョッとする。


「美空ちゃんもう二十八歳でしょ? 圭くんもあんな大手に就職したんだもの、そろそろ自分が幸せになることを考えないと!」

「――と、言われましても……」

返答に困る。圭を大学まで無事に卒業させないとって使命感で、今まで必死に生きてきた。

なのに急に自分のことをって言われても……。

それに恋愛には臆病になる。どうしても昔のことを思い出してしまうから。男の人が苦手。

だからこそ高校は女子高へ進学し、就職も女性が多い職場でもある医療事務の仕事を選んだ。

「その顔だと恋人はいないわね?」

確信めいた目で私を見る叔母さんに頷くと、パッと表情を変えた。