復讐劇は苦い恋の味

仕事が終わらないことなんて、医療事務員の私には滅多にないことだ。ほぼ毎日定時で上がれている。

苦しい言い訳だけど、それを聞いて君嶋くんは微笑み首を横に振った。

「謝らないでください。……お仕事、お疲れ様でした。今日はこうしてお会いしていただけて、本当に嬉しいです」

そう言うと彼は、あまりに優しく微笑むものだから不覚にもドキッとしてしまった。

な、なんでドキッとしちゃうわけ? 相手は君嶋くんだよ? なのに心臓はドクンドクンと高鳴り続けている。

最初からこんな調子でどうするのよ。今夜は私、君嶋くんに復讐するために来たのに。

胸の高鳴りをかき消すように自分を奮い立たせる。

「それでは行きましょうか」

そう言って先に歩き出した君嶋くんの後を慌てて追った。

「あのっ……! ちょっと待ってください!」

私の声に彼はすぐに足を止め、私を見つめる。

「どうかされましたか?」

事前に君嶋くんからイタリアンレストランを予約しておくと聞き、私もそれに了承した。だからこそ言うんだ。

女優になったつもりでニッコリ笑った。