復讐劇は苦い恋の味

駅の改札口付近では、金曜日の夜ということもあって待ち合わせしている人がたくさんいた。けれどその中でも一際目を引く彼の容姿。

こんなにたくさんの人で溢れているというのに、すぐに見つけてしまうことができる。


おまけに待ち合わせ時間より遅れているからか、君嶋くんは忙しなく周囲を見回している。その姿に再び良心がチクリと痛んだ。

さ、さすがに連絡もせずに三十分も遅刻したのは、まずかったかもしれない。

慌てて小走りで彼の元へ駆け寄った。近づいていくとすぐに君嶋くんは私に気づき、彼もまた私の元へ駆け寄る。

「あのっ……! 遅れてすみませっ……」

「よかった!」

謝る私の声を遮り、余裕ない声で彼は言うと肩を落とした。

「なにかあったのかと思って、心配で……。何事もなくホッとしました」

心底安心した顔を見せる彼に、胸がズキッと痛む。

私、三十分も遅刻してきたんだよ? 怒ってもいいのに。それなのに私の心配をしてくれていたなんて……。

「あの、遅れてしまいすみませんでした。その……仕事が終わらなくて」


遅刻して彼を困らせてやろうと思っていたのに、気づいたら頭を下げている自分がいた。そして嘘を並べている。