復讐劇は苦い恋の味

期待した目で私を見る彼から逃れチラッと周囲を見回すと、いつの間にか多くのギャラリーが。その中には医師や看護師までいる。

「どうでしょうか?」

どうでしょうかって……! この状況でそれを聞く!? 断れるわけないじゃない!!

もしかして君嶋くん、私だって気づいた? だから嫌がらせのつもりでこんな大勢の前で食事に誘っているの?

疑いめいた目で見るものの、彼は緊張した面持ちで私の答えを待っている。

もしこれが私に気づいていて、嫌がらせの演技だというのなら、君嶋くんは俳優になれると思う。


じゃあ本気、なんだよね? 私には気づいていなくて、昔さんざん嫌っていた相手を食事に誘っているんだ。好意を抱いているのがバレバレなほど、余裕なく。

なんて残酷な人だろうか。悪意がないから余計に。

復讐なんてしない。したって意味などないと思っていた。――けれど。

拳をギュッと握りしめ、私の様子を窺う彼を見据えた。

「あの、では金曜日などいかがでしょうか?」

尋ねるとパッと彼は嬉しそうに表情を変えた。

「もちろん大丈夫です! なにか予定があったとしても、すべてどうにかしますから!!」