復讐劇は苦い恋の味

中には君嶋くんのことを知っている人もいるようで、こそこそ話しながら「うそ、本当に?」とか、「あの人がうちと取引のある副社長……?」なんて言っている。

「昼休みを狙ってきたのですが、このままお会いできないかと思いました」

なのに君嶋くんは周囲の目なんて気にならない様子で、真っ直ぐ私を見つめたまま。

困る。……本当に困る。

ここは職場で彼はうちの病院の取引先の副社長。それを知っている人も少なくない。

それなのにそれを承知の上で私に会いにきたってことは……。

バクバクうるさい心臓を必死に鎮めていると、彼は恐れていたことを口にした。


「あの、今夜お時間ありますか? 今夜が無理でしたら、いつでもいいです! なんとしても予定合わせますから! なので今度、食事へ行きませんか? ……今度はふたりで」

照れ臭そうに首の後ろに手をやる彼に、返答に困る。

やっぱりそうなるよね、わざわざここまで来たんだもの。悪いけどもちろんお断りだ!

食事どころか、会いたくなかった人なのだから。でも――。